契約種別の区分
(電気供給約款の理論と実務より抜粋)
需要区分とは、負荷の特性、負荷態様の差異を基準にして需要を分類したものをいい、これは、現在電灯需要(従量電灯等)、電力需要(低圧電力、高圧電力)、電灯電力併用需要(業務用電力)の三つに区分されている。
我が国の電気利用は、歴史的には照明用としての電灯需要、引き続いて作業用として電動機などを使う動力用の需要が発生し、夜間の家庭照明と昼間の工場用動 力といった形態で発展してきた。このようなところから、電灯と電力の区分が成立してきたが、これは照明を使用するか動力を使用するかに着目した区分である といえる。
しかし、その後の経済社会の発展にともなって、電気の利用方法も多様化し、ラジオ、アイロン等各種の電気機器が家庭において使用されるようになり、また工 場では、各種機能の多様化した機械の導入、夜間労働の一般化にともない、作業上必要なものとして照明が使用されるようになり、単純に照明=電灯、動力=電
力と需要を区別することが困難な状態となった。このため、単相で使用される照明用以外の低圧の電気機器については、これを小型機器と定義して電灯需要に含 める一方、動力を使用するために直接必要な作業用の電灯およびこれに準ずるものを付帯電灯と定義し、電力需要に含めた体系となっている。
ただし、低圧供給の電力需要の場合には、その規模が小さく1需要場所において作業用あるいは商業用の動力と住宅用の照明が混在しており、付帯電灯であるかどうか判然と区別しがたいことなどから、電力需要に付帯電灯を含めていない。
なお、このような電灯需要、電力需要に加え、電気利用の進展にともなって電灯と電力とをあわせて使用する事務所等の需要が出現し、電灯電力併用需要が生ま れてきた。このように需要を電灯と電力とに大別することは、従来から一貫して採られてきた基本的な考え方である。
契約種別 |
適用範囲に示される契約上使用できる負荷設備 |
供給方式 |
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電灯需要 |
定額電灯 |
電灯または小型機器を使用する需要 |
交流単相2線式 100V.200V もしくは 交流単相3線式 100V.200V |
従量電灯 |
電灯または小型機器を使用する需要 |
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臨時電灯 |
電灯または小型機器を使用し、契約使用期間が一年未満の需要 |
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公衆街路灯 |
公衆のために、一般道路、橋、公園等に照明用として設置された電灯または火災報知機灯、消火栓標識灯、交通信号灯、海空路標識灯その他これに準ずる電灯もしくは小型機器を使用する需要 |
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電灯電力 併用需要 |
業務用電力 |
高圧で電気の供給を受けて、電灯もしくは小型機器を使用しまたは電灯もしくは小型機器と動力とを併せて使用する需要 |
交流3相3線式 6,000V |
電力需要 |
低圧電力 |
低圧で電気の供給を受けて動力を使用する需要 |
交流3相3線式 200V |
高圧電力 |
高圧で電気の供給を受けて動力(※付帯電灯を含みます)を使用する需要 |
交流3相3線式 6,000V |
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臨時電力 |
契約使用期間が一年未満の需要で、次のいずれかに該当するものに適用いたします。ただし、毎年、一定期間を限り、反復使用する需要には適用いたしません。 イ動力(高圧で電気の供給を受ける場合は、※付帯電灯を含みます。)を使用するもの。 ロ高圧で電気の供給を受けて、電灯もしくは小型機器を使用し、または 電灯もしくは小型機器と動力とを併せて使用する需要 |
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農事用電力 |
農事用のかんがい排水のために動力(高圧で電気の供給を受ける場合は、※付帯電灯を含みます。)を使用する需要 |
交流3相3線式 200V 又は 6,000V |
1.電灯需要
電灯需要の契約種別は低圧では定額電灯、従量電灯、臨時電灯、公衆街路灯などがある。
ここで電灯とは白熱電球、ネオン管灯、水銀灯等の照明用電気機器(付属装置を含む)をいう(「3定義」(3))。
照明用電気機器は発生史的にも現在においても電灯需要の根幹をなすもので、現在では、広告、装飾、標識、通信、栽培、養魚等のために使用されているものもあるが、それが本来照明を目的とする機器であれば電灯に含まれる。
また、小型機器とは、主として住宅、店舗、事務所等において単相で使用される電灯以外の低圧の電気機器をいう。ただし電灯と併用できないものは除かれる (「3定義」(4))。これは生活の近代化にともなって、一般家庭や店舗等で使用できる種々の機器が発生し、電灯需要に取り込まれたもので、テレビ、ステ
レオ等のAV機器や、パソコン、コピー機等のOA機器、エアコン、冷蔵庫等の単相モータ応用機器等の各種低圧電気機器がこれに該当する。電灯と併用できる ものであるからモータでも単相交流を使用するものに限られ、また、単相機器であっても急激な電圧の変動等により、他の需要家の電灯の使用を妨害し、もしく は妨害するおそれのあるもの、たとえば溶接機等は小型機器ではなく、動力として取り扱われる。
「単相3線式」は、3本の電線のうち真ん中の中性線と上または下の電圧線を利用すれば100ボルト、中性線以外の上と下の電圧線を利用すれば200ボルトが利用できます。「単相2線式」は、電圧線と中性線の2本の線を利用するので、100ボルトしか使用することができません。
2.電力需要
電力需要(動力)には低圧では低圧電力、高圧では高圧電力(付帯電灯含む)の契約種別がある。
ここでは、付帯電灯が認められない低圧電力で説明する。
動力とは、電灯および小型機器以外のものをいい(「3定義」(5))、電動機はもとより、産業用の電熱器や溶接機なども含まれる(約款別表3では3相誘導電動機、電気溶接機、レントゲン装置が記載されている)。
低圧電力では付帯電灯は認められていない。これは、照明用としてはすでに電灯契約種別が存在していること、低圧電力によって動力を使用する需要において は、多くの場合動力使用のための作業用電灯とその他の用途のための電灯とが事実上区別できないこと等によるものである。ただし、動力と一体として使用さ れ、かつ直接必要で欠くことができない表示灯(パイロットランプ)に限っては認められている。
なお、供給約款は小型機器を「主として住宅、店舗、事務所等において単相で使用される、電灯以外の低圧の電気機器をいう、ただし、電灯と併用できないものは除く。」と定義している。
このため、たとえば住宅で3相誘導電動を使用する場合は一般に電灯契約種別と低圧電力とが併存することになる。この場合3相供給の危険性を考慮して、電気設備に関する技術基準ではつぎのような制限が課せられていることに注意しなければならない。
すなわち、電気設備技術基準の解釈第162条によれば、住宅の屋内電路の対地電圧は150V以下としなければならないが、大略次の条件を同時に満足する 場合に限り、対地電圧を300V以下とすることが認められている。(3相3線式200Vの対地電圧は200V「または173V」であり、単相3線式 200Vの対地電圧は100Vである。)
①定格消費電力が2KW以上の電気機器であること。
②専用回路が施設されていること。
③使用電圧は300V以下であること。
④人が容易に触れることがないように施設するか、または絶縁性のある材料で堅牢に作られていること。
⑤電気機器は屋内配線と直接接続して使用すること。
⑥専用回路には、開閉器、過電流しゃ断器を施設すること。
⑦接地事故が発生した場合に自動的に回路をしゃ断する装置を施設すること。
このような例外が認められたのは、固定して施設する定格消費電力2KW以上の電気機器については、機器の効率および配線の経済性から3相200Vによる使 用が合理的な場合もあることを考慮したものである。なお、2KW未満のものが対象となっていないのは、単相使用による機器の効率および配線の経済性がそれ
ほど問題とならず、単相3線式による対地電圧100V、使用電圧200Vで対応できると考えられたためである。
低圧電力の供給電気方式および供給電圧は、交流3相3線式標準電圧200Vが原則であるが、溶接機、生産用電熱器(農事用が多い)等で電気技術的にやむ を得ない特別の事情がある場合には、交流単相2線式標準電圧100Vもしくは200Vまたは交流単相3線式標準電圧100Vもしくは200Vとされること がある。
3.三相交流の理由
堅牢で構造が簡単な3相誘導電動機は、安価であることなどから動力用として極めて広範囲に用いられている電動機である。
用途は次のように広範囲に亘る。
ポンプ、空調機、フアン、破砕機、圧縮機、コンベアー、工作機、巻線機、ミル、抽出機、遠心機械 プレス、ホイスト、天井クレーン、油井、エレベーター、繊維機械、グラインダー,木工機械、射出機、押出機、ローラーテーブル、クーリングタワー、包装機械、等
3相誘導電動機に3相交流が入力されると簡単に回転トルクを得ることができる。
さらに
○変圧器で任意に電圧が変更できる。
○単相電源、直流電源が取りやすい。
などの理由で 電力会社では3相交流で発電を行っている。
4.小型機器の定義の問題
容量が不明確のため、電力会社と揉める原因となる。
○小 型 機 器
主として住宅、店舗、事務所等において単相で使用される、電灯以外の低圧の電気機器をいいます。ただし、
急激な電圧の変動等により他のお客様の電灯の使用を妨害し、または妨害するおそれがあり、電灯と併用できないものは除きます。
○動 力
電灯および小型機器以外の電気機器をいいます。
物理的に「動力」とは、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電動機をいう。
約款で示される電動機は、家庭用の洗濯機、換気扇などに用いられる小型の単相誘導電動機と3相誘導電動機があるが、単相で使用されるものは小型機器として区分されている。
物理的にも約款上においても、動力 と言えるのは 3相誘導電動機 となる。